COLUMN
SWX総研
2021年は、自社の本当の強み・弱みが分かった1年
2021年を振り返ってみると、前半はワクチン接種が進まず、緊急事態宣言が続く中での営業を強いられました。この1年のほとんどが緊急事態宣言下、もしくは蔓延防止策の実施期間であり、通常営業が叶ったのが10月以降という、極めて厳しい状況でした。
この試練を乗り越えるために、各社から新しいサービスや業態が現れました。
特徴的なものとしては、百貨店を中心とした「売らない店」の登場です。“店舗のメディア化”という流れで、リアル店舗は「商品を体験したり、新しい発見をする場所」として位置づけられ、商品はWEBで買ってもらうというものです。店に在庫を置かないことによって、「売る場所から、魅せる場所」に変化を遂げていったのです。これは、百貨店のもともとの強みである「新しい商品やサービスを届けられる」という部分を活かした売り場の転換例だと思います。
ドラッグストア・食品スーパー等、生活必需品を扱う業態は、昨年のコロナ特需があり、昨年対比を超えられる企業は少なく、減収・減益の決算をする企業が多くなりました。本当の意味での自社の強みは何かを明確にする必要性がでてきているように思います。特需ではなく、固定客というファンを作り出すため、「毎日の生活を彩る」ような売り場づくりなどが必要に感じます。元来、生活に必要不可欠なものを扱っているからこそ、お客様にどんな生活を提案していけるのかが重要な気がします。
外食企業は、以前からテイクアウトが強かったファーストフード業態を中心に、店内飲食以外に強みを持つ企業で増収・増益が続いています。一方、居酒屋業態などは、テイクアウトメニューを用意しても適切な売上や利益を出せませんでした。お客様が自社に求めているものは何かをはっきりさせ、それに合致しないものは捨てる覚悟が必要だと思います。利益率が低いままに、新しいサービスを投入してしまうと、オペレーションも複雑になり、さらに費用が嵩むケースもあります。やはり「選択」と「集中」が大事になると考えます。
そこで、2022年に対しては、以下3つがキーになってくると思います。
①「自社の強み」は何かを明確にする
様々な方法でコロナ対策をしてみたものの、適切な売上・利益を確保できないものからは「撤退」する勇気が必要だと思います。特に外食では「テイクアウト」や「店外施策」に向かない業態がそれらを強化しても、お客さまはそれを求めていないケースがあります。よって、もう一度、自社の強みを明らかにし、何にフォーカスするのかを「選択」する必要があります。無理やりではなく、自社の強みを軸としたサービスによってアフターコロナに適応するべきだと思います。また、今の業態に固執することなく、他の業態やフォーマットを開発していくということも考えていくべきでしょう。
②「適正価格」での提供
コロナによってオーバーストア状態が緩和されることもあり、単に低価格を実現するための合理化だけではなく、いかにお客さまに付加価値を感じてもらえるかを考える機会だと思います。例えば、コロナがもたらした不可逆的な変化の中に、リモート勤務の継続があります。週5日、オフィスに通って仕事をすることはなくなりました。よって都心部の店舗は、来店顧客の減少は避けて通ることができません。客数が減る中で薄利多売を続けるのではなく、適正な価格での提供を検討し、適切な売上・利益を確保し、従業員の待遇改善や顧客満足度の向上を強化していくべきだと思います。今後、さらに人口が減っていく時代になることから、従業員の確保はサービス業にとっての経営課題になります。当然、顧客数も減少することから、適正価格での提供は不可欠になると考えます。
③「付加価値」の見直し
②と連動しますが、付加価値を提供することを厭わないことです。私自身も週に2回程度しか夜の外食をしない環境になりました。どうせなら、美味しいところにみんなと食べに行きたいと本当に思います。いつでも行けるようなお店ではなく、その店に行く目的がしっかりとあることが重要だと思います。小売業でも単に安いだけではなく、アプリとの連動や、注文したものが店内ロッカーで受け取れるなどの利便性が価値になります。このような付加価値をしっかりと提供し、お客さまから選ばれるお店を作ることが必須になると思います。
アフターコロナこそ、自分たちの存在意義をかけた勝負になります。
今一度、自社の存在意義は何かを明確にし、提供すべきサービスとは何か、を見つめ直すことが求められていると思います。