COLUMN
SWX総研
このGWで、消費者の行動が大きく変化したと感じました。3年ぶりにコロナによる移動規制のない大型連休になり、天気の良さもあって観光地はかなりの人手になっていました。私自身も都内で開催された「肉フェス」に参加したり、皇居周辺を観光したり、那須に出かけたりと行動が増えたGWでした。各地でかなりの人手でしたし、久々のレジャーをみんなが楽しんでいたのだと思います。
それと同時に、消費者として「物価の上昇」を肌身に感じるGWでもありました。ロックダウンで物流がストップした上海港湾の影響、ウクライナ問題、さらに円安も重なり、あらゆる原材料の価格が高騰しています。すでに、大手企業を中心に原材料価格への転換を始めており、店頭でのモノの価格、サービス料金も高くなったなという印象を受けました。
「物価上昇」は通常、経済成長に伴って起こる現象です。モノの供給よりも消費者の需要が上回るので、供給不足になって価格が上昇します。これがいわゆるインフレ経済です。しかし今回の物価上昇は、経済成長を伴わないため、消費者の賃金は増えていません。巷では「悪いインフレ」などとも言われています。消費者の財布を直撃してしまい、生活防衛に意識が強く働いてしまうので、消費自体が落ち込んでしまうのです。店舗サービス業にとってそれは、来店頻度の減少という形で見えてくるでしょう。一般消費者にとっては、外食の機会を制限するとか、買い物をする回数を減らすなどして、生活にかかるコストを抑えなければならないためです。
店舗サービス業において、この消費者心理の変化を察知し、値下げをする事で来店を促すような作戦がすぐ浮かぶことでしょう。
しかし「ずっと値下げを続ける」という選択は、自分たちの企業体力を消耗するだけです。今回の物価上昇は決して一過性のものではありません。円安は、現在の日本の国力の衰えを反映しており、構造的に続くものだからです。よって、大切なのは今が「デフレからインフレに変わる局面」だと捉えて、「値上げ」を受け入れてもらえるサービスを提供する店にしていく、「事業モデルの転換」を意識することです。
この業界の30年間の成功体験は、「デフレ」というモノの価格を下げることで得られたものです。しかし今後は、その逆の局面を戦っていく必要があると思います。それは「商品の安さ」の訴求よりも、「店舗体験の向上・サービス体験の向上」を強め、「価格の上昇」を受け入れてもらい、それ以上の満足を提供することだと思います。
リアル店舗ビジネスには「商圏」があり、その商圏内の人たちのリピート獲得ゲームをしているようなものです。いかにしてもう一度来店してもらい、商品・サービスを購入してもらえるか。それは、顧客体験の価値を上げる事で可能になると思っています。そのための原理原則は、「クオリティー(Q)、サービス(S)、クリーンネス(C)」の徹底であり、そこに「ホスピタリティー(H)」を加えた「QSCH」の徹底です。この「徹底」が重要で、スタッフ全員に、日常的に「QSCH」を意識した行動をとってもらい、それが定着させる必要があります。また、顧客体験を上げるための「知識」「技術」の教育ができていることも重要です。この2つが機能し始めて、店舗の底力が上がり、顧客体験を高めることができます。
このように、デフレ経済からインフレ経済への転換に対応していくには、いかに店舗の付加価値を高めることができるかが重要です。その変化への対応は、店舗体験を創造しているスタッフの知識、技術、マインドといった「ソフト力」を高めるための教育や日常的な育成を地道にやり抜くことだと思います。安易な値引きではなく、地道だけど、お客様の満足、感動を作り上げる「サービス」を徹底的に磨き込むこと。それが重要だと思います。