COLUMN
SWX総研
先日、日経新聞に以下の記事が掲載されました。
■日本の「熱意ある社員」5% 世界は最高、広がる差https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF131HN0T10C23A6000000/
日本はGDPで世界3位を誇る経済大国なのに、「社員に熱意がない」や「エンゲージメントが低い」など人の”気持ち”を測定する調査では、最低点を叩き出し続けています。
また、エンゲージメントの調査も世界平均は右肩上がりで上昇しているにも関わらず、日本は4年連続5%という結果です。世界の企業がエンゲージメント経営に注力しているのに、日本だけはまだ関心が低い状態だと言わざるを得ません。
社員のエンゲージメントが、生産性向上に影響があることは学術的にも証明されているのに、なぜ日本はエンゲージメントに関心が低いのでしょうか。
そもそもエンゲージメントとは、「自発的に会社の成果に貢献したい」と思うことを指します。当たり前ですが、「言われたことしかやりたくない・やらない」と思う社員が多い企業と、エンゲージメントが高く「もっと良くなることを考えたい・もっと成長したい」と考える社員が多い企業とでは売り上げや付加価値に大きな差が生まれます。また、離職者数やコストも下がることになるので、経営にとってはとても重要な要素となることは明らかです。
しかし、日本は社員の”気持ち”のような曖昧で目に見えないものへの投資を避ける傾向があるのではないでしょうか?
「投資対効果が見えない」という言い訳の裏には、以下のような考えが見え隠れするように思えます。
「社員に投資をしても売り上げの増加などのリターンがあると思えない(社員を信じていない)」
「人件費はコストであり、これ以上社員にコストをかけたくない(社員は投資対象ではなくコストである)」
「上司部下等の組織の階級格差やルールがある中で、新しいことを取り入れる際に社員を説得することができない(社員の意識を変えられるほどの信念がない)」
もちろん、投資対効果は投資の基本ですが、「いくら儲かる」「いくら削減できる」という”お金”に換算できないものは全て投資対象外である、という考え方には疑問を感じます。
お金に換算できれば、判断基準は明確になるため、意志決定はより簡単で、誰でも判断できます。しかし、この「誰でもできる意志決定」は”お金”という世間共通の一般的な判断軸でしかないため「経営者じゃなくてもできる」、「社外の人でもできる」簡易的な意志決定に他なりません。
より高度な意志決定とは、経営者自身の信念に根ざした判断軸や、学術的な理論から自分で効果を予測して行う意志決定であり、そこに会社の信念や意志や文化が現れ、自社の独自性を生み出したり、他社にはない差別化や特徴を生み出すことができるものです。
よくリベラルアーツが高度人材育成には絶対に必要だと言えるのは、このような高度な意志決定をする際に、リベラルな知識を武器にすると判断軸の広がりをもつことができるからだと考えます。
私たちの向き合うサービス産業は、業務効率化だけではなく、お客様へのサービスに関わる様々な「付加価値」を生産する必要があります。そのためには、明らかに「言われたことしかやらない社員」しかいない店舗ではなく、「自発的にお客様に対して貢献する社員」が多い店舗が人気店になることは自明です。だからこそ、積極的に「エンゲージメント経営」へのシフトをやり遂げて、日本を代表する産業として、人材力によって生産性を高めてほしいと思っています。