COLUMN
SWX総研
最近また、「Well-Bing」*1というワードに注目が集まってきています。
*1心身共に、また社会的な健康を意味する概念。満足した生活を送れている、充実しているなど「持続的な」幸せ、幸福を意味する。
年始に日経新聞が特集で取り上げたり、日本を含めた先進国が、GDP(国内総生産)に変わる指標として重要視しようとしています。
国が追うべき指標として、産業発展だけを追うだけではなく、それが国民の幸せに繋がっているのかを重視するという考え方です。「それって当然なのでは?」と思いがちですが、実は日本はGDP世界3位の経済大国にも関わらず、世界幸福度調査*2によると149カ国中56位(2021年)となっています。つまり、経済成長と国民の幸福度が乖離していることを意味しています。
※2 World Happiness Report 2021
https://happiness-report.s3.amazonaws.com/2021/WHR+21.pdf
本来であれば、経済的な発展と成長は国民生活を豊にし、幸福度と比例するはずです。しかし残念ながら企業側は、経済の成長が鈍化してしまうと「将来に渡って会社の成長に期待が持てない」と考え、固定費の中で大きい「人件費」を削減しようとします。
“失われた30年”とは、バブルが崩壊し、会社が「コスト」になり得る正社員比率を下げ、変動費としていつでも削減できる非正規雇用を増やしてきたと言うこともできます。実際に、この30年で非正規雇用は1300万人も増え、労働力人口の38%まで増加しています。一方で正規雇用は26万人も減っています。
※総務省統計局HPより
その結果、会社の成長と社員(国民)の幸福は切り離されてしました。それが30年間も続くことで、会社と社員の関係は希薄化し、それが国と国民の関係性の希薄化まで及んできたのだと推測されます。
しかし、これから「Well-Bing」を重視する国の方針や機関投資家が、企業に投資する基準として「社員の幸福度や満足度を高めていること」という条件が盛り込まれていくことで、希薄化した会社と社員の関係性が再び良くなることを期待したいと思っています。
我々のお客様である店舗サービス業においての「Well-Bing」向上は、各企業が労働生産性を高めるための「デジタル投資」で実現可能だと思っています。業務の時間効率を高め、付加価値の高い仕事に人をシフトさせる。それによって単位時間あたりの付加価値を高め、労働生産性は上がり、企業は儲かり、その利益を給与と待遇面に変換し、人材に投資することができます。
今後、労働力人口はどんどん減少していきます。人を新たに採用し続けるコストよりも、既存の従業員の満足度を高め、定着・戦力化を目指す方が得策になります。人材はPLでは人件費という「コスト」になりますが、本来、人材は投資すれば成長する「資産」なのです。また人の能力を拡張するためにデジタル投資をすることで、店舗が「サービスの品質」で競争ができるようになります。これまでの「量的拡大」「売上重視」の戦いから、「質的拡大」「利益重視」の戦いに変化すること、それがサービス業の勝ち筋であり、従業員と共に栄える店づくりに繋がっていきます。
「Well-Bing」を重要視した経営は、この「従業員と共に栄える店づくり」という商業の本来あるべき姿に回帰するきっかけになると思います。