COLUMN
SWX総研
ワクチン接種が進み、1日の感染者数も激減し、10月25日から飲食店の通常営業がスタートしました。通常営業から遠ざかっていたお店も、またお客様に「サービス」という価値を提供することができるようになりました。
そこで今回は、コロナがもたらした変化から、アフターコロナにおいて店舗サービス業が重要視するべき視点について書きたいと思います。
コロナがもたらした構造的変化
①「テレワーク」から「オフィス勤務」には戻らない
多くの企業で「オフィスで仕事をすることが前提」から「自宅で仕事をするが前提」に変わりました。その方が仕事は効率的であり、社員も家族と一緒にいる時間が増えることでワークアズライフの価値観で仕事ができます。また会社としても、社員の増加に合わせてオフィスの家賃が増大していく事もありません。つまり個人と企業の両方の視点から見ても、完全に週5日出社に戻ることはないと思われます。
②日常品の「ネット消費」は「店舗消費」には戻らない
人との接触を避けるため、店舗に行って購入するという行動は心理的に抑制され、日常的に購入するものは「ネットで買う」形に変化しました。これが1年半に渡って続いたことで、人々の消費行動は習慣化され、アフターコロナも続いていくと思われます。
③消費の2分化は戻らない
コロナによって多くの産業が打撃を受け、給与所得が伸びない、むしろ下がることで、消費性向は大きく2つに分かれました。それは自分がこだわりたい商品と、こだわりがない商品にかける金額の度合いです。「これがいい」と思うものにはお金をかけ、「これでいい」ものはネットで一番安いものを買うことになります。つまり店舗は「これがいい」と思う商品を探し、発見し、体験し、納得して購入する場所になる必要があります。
上記の3つ構造的な変化は元には戻らないと考え、店舗の価値を再編集する必要があると思います。その鍵は、店舗だけが創造する「サービス」という価値です。サービスとは、店舗とお客様の「間」に発生する無形の価値です。
<サービスの定義>
①無形成
②生産と消費の同時性
③顧客との相互作用で創造される
④結果と過程
⑤共同生産
上記サービスの定義から理解できるのは、無形の価値を従業員とお客様の間に共同生産するものであり、購入・消費される過程(プロセス)までも含むことです。
外食で考えるとお店に入店された時の挨拶や対応、お店の綺麗さ、そして注文時の対応、注文した食べ物が届く時間、食事の美味しさ、寛げる環境、お支払い、退店まで、お客様との接点全てが「サービス」になります。これを部分最適で対応するのではなく、プロセス全体を最適化できて初めて、サービス品質が上がります。
それには、部分的に省人化して業務効率をあげるだけでは難しく、効率化した時間を全体最適となる「顧客接点の強化」に結びつける必要があります。
それを担うのが、やはり「従業員」だと思います。従業員の店舗へのロイリティーの高さが顧客接点時の対応に全て現れますし、それをお客様は敏感に感じ取ります。このロイヤリティーを生み出すのが「働きがい」がある店かどうかになります。やらされ感がある仕事や無理やり働かされていると思えば、お客様に向き合う姿勢が悪くなるのは当然です。結局、雰囲気がよく、清潔で、接客対応の良い店は、従業員にとって「働きがい」のある店なのです。
この原理原則を徹底し、もう一度愛される店づくりができた企業からアフターコロナの業績は伸びていくことになると思います。
今一度、業務効率化一辺倒のDXから、スタッフの働きがいも創造するDXとの両立を考えることが必要だと思います。