COLUMN
SWX総研
新型コロナウイルスの勢いが衰えず、2021年も関東一都三県での「緊急事態宣言」からスタートしました。コロナの脅威とは、私たちに何を投げかけているのか、改めて考えてみます。
昨年の1回目の緊急事態宣言では、私も経営者として様々なことを考えました。大きな経営判断は2つ、1つは、経費の大幅な削減で会社を1日でも延命すること、もう1つは、新規顧客獲得のためのマーケティングをストップし、既存顧客の課題解決にだけフォーカスしたことです。
なぜ、新規顧客の獲得をやめて、既存顧客の課題解決にフォーカスしたのか。それは、事業の基盤は常に「既存顧客」からの収益で成り立っているからです。既存顧客からのリピートの上に、事業が成立しているといっても過言ではありません。当時の決断は、事業の基盤となる既存顧客がコロナ禍で経営は苦しくても「あなたとは付き合いたい」と思ってもらうことを最優先にしたのです。
一方で感染症の流行・拡大は、店舗サービス業に対し外出自粛による客数の激減をもたらしました。これは10年・20年後の人口が減少した日本の姿そのものです。人口が減少していく社会構造において、これまでと同じような新規客の増加は見込めません。店舗が存在する一定の商圏の中でのリピート客の取り合いとなる訳です。ではどのようにして、お客様から選ばれ、自店舗にリピートしてもらえるのでしょうか。
ニューノーマルな社会で選ばれる店づくりができているのか、それを評価するために、私は店舗サービス業こそ「LTV:ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)」を重視した経営にシフトする必要があると思っています。1人のお客様が自社にどれだけ利益をもたらしてくれるのかを重要視する経営のことです。1人のお客様が同じ店舗にずっとお金を払ってくださるということは、その店舗へのエンゲージメントの高さを意味し、ずっと応援し続けてくれるファンの1人とも言えます。LTVを指標とすることで、その店舗における顧客基盤・事業基盤の強さが見えてくるのです。
現在、多くの店舗サービス業の経営指標は、四半期ベースの「売上や粗利」、「(店舗の)坪単価」であったりします。この指標の問題は、「お店に、誰が、いくら貢献してくれているのか」という、売上の中身が分からないことです。もしかしたら、一度きりのお客様だけで売上を作っているかもしれません。その場合はずっと新規獲得費用がかかり続けてしまいます。もしリピート顧客が増えていれば、マーケティングコストは徐々に減っていき、利益が残る構造へ向かっていくことが分かります。そして得た経営資源を「顧客への付加価値提供」、「より良いユーザー体験の創出」に投入し、限られた商圏内でお客様に選ばれる店に改善できるという好循環を生み出せるのです。今こそ、LTV重視の経営へのシフトが求められていると思います。