COLUMN
SWX総研
前回は日米を比較することにより、日本はなぜ生産性が低いのか、生産性を高めるためにはどうすれば良いのかを見てきました。今回は、企業が何に投資をすれば「付加価値」を高めることにつながるのかを考えていきたいと思います。
出典:「日本の生産性の現状、サービス産業生産性向上に向けた取り組み」
東洋大学経済学部(当時) 滝澤教授
イノベーションを通じた生産性向上に関する研究会 財務省財務総合政策研究所
第2回「IT資産の蓄積と人材投資の重要性」
結論として、生産性を高めるためには資本蓄積がまず必要です。
詳しく見ていきましょう。
上記の資料より、国際比較でも日本はIT投資が低い状態であり、2000年代前半からそのシェアを落としていることも分かります。
特に、サービス業におけるソフトウェア投資額(資本蓄積)は、製造業に比較して鈍化していることが分かります。これは2000年からの不況によって労働力を安価に確保することができるようになったため、IT投資による業務変革が起こらなかったことが要因と推測されます。つまりそれこそがサービス産業において生産性が高まらずに現在まで至ってしまった原因である可能性が非常に高いのです。
ただIT資本への投資は、それだけでは生産性向上には有効に作用しません。「IT資本を活用する人材」への投資が同時に行われてこそ、IT資本が有効に活用されるのです。よって生産性を高めるためには、「人材という無形資産への投資」と「IT資本への投資」の両軸を行なっていくことが重要なのです。日本のサービス業では特にこの「人材という無形資産への投資」を怠ってきてしまったと言えます。
実際に上図を見ると、日本の人材教育への投資額の平均は非常に低く、統計調査の種類にもよりますが、概ね1-4万円の間となっています。しかし他の先進国では、この4倍程度の投資をしているのです。また諸外国が革新的な業務変革等につながる教育投資に積極的な一方で、日本の人材教育というと役職研修などが多く、革新的な業務知識や技術を身につけるための投資がされていないことで、人的資本が減少している点でも、労働生産性の低迷を招いています。
今後、労働力減少という労働供給への制約が大きくかかる日本において、生産性の向上は最重要課題です。 特に労働集約的な産業であるサービス産業においては、 省人化に主眼を置いた従来型の効率化の取り組みに加えて、同時に付加価値の向上を図っていく必要があります。労働力が減るということは、逆の視点ではお客様の数も減るということであるため、店舗運営の省人化施策だけでは生産性を上げることができず、従業員の賃金を上げることもできません。よって今、物価上昇・賃金上昇という局面に入った以上、これからはIT資本の蓄積とそれを活用する人材への教育投資という施策を打つ必要性があるのです。