COLUMN
SWX総研
2022年が間も無く終わりを迎えますが、皆さんにとってどんな1年だったでしょうか。
振り返ってみると、新型オミクロン株の登場によって年始からコロナ第6波に苦しめられる形で前半がスタートしました。アメリカの金利上昇による株価の落ち込み、ロシアによるウクライナ侵攻はサプライチェーンの混乱を招き、エネルギーや穀物などの価格を上昇させました。さらに円安の進行で輸入物価が30%以上も上昇するなど、店舗サービス業においては原価高騰による商品の「値上げ」という苦渋の選択をした経営者も多いのではないでしょうか。
コロナの影響が沈静化してきた秋以降は、サービス業全体が「通常営業」に戻る形になりましたが、通常営業がしたくても人手が足りず営業時間を短縮したり、席は空いているがお客様を入れられないという事態となるまで人手不足が深刻化しました。
さて、来年の円相場は1ドル130円〜140円台が想定されているそうです。今年に比べればやや円高に触れる予測もありますが、1ドル100円で換算していた時代に戻ることはなさそうです。サプライチェーンやエネルギー関連の問題を残しているため、引き続き物価が上昇することになり、来年も「値上げ」を考えていく必要がありそうです。
また人手不足が解消されるような好材料はなく、労働力人口は年々減少し続けることを想定しなければなりません。1年間に約10万人レベルで労働力が失われること、大学生などの若い労働力はどんどん減っていく環境になります。人手不足が今後、継続した経営課題になっていくことは間違いないのです。
つまり店舗サービス業にとって「物価上昇」と「人手不足」への本質的な対応が、2023年の経営テーマになること必至です。
①物価上昇への対応
「物価の上昇=原価上昇=粗利の減少」になります。よって上昇する原価に対して「粗利」を確保する必要があります。粗利は「付加価値」を示す指標です。日本は人口が減り、個々人のニーズの細分化が進んでいます。もはやこれまでのように「大量に作って安く売る」という戦術が通用しない時代です。よって、いかにパーソナライズされた商品やサービスを提供することで「付加価値」をつけることができるかが勝負になります。そのためには、店舗スタッフが持っている顧客のニーズや指向などの情報を収集し、エリア単位や店舗単位での品揃えやサービスを提供することや、顧客とSNSなどでの繋がりを持ちながら、パーソナルな接客をするなどの「マスから個への対応」が必要です。このようにモノとサービスが連動することで「付加価値」をつけることの重要性が増してくると思います。
②「人手不足」の対応
「人手不足=販管費上昇=営業利益の減少」に繋がります。対策としては、ITによって業務を効率化し、店舗運営の省人化を進めることと、スタッフの能力を引き出し「マルチタスク人材」に育てることです。①により店舗の付加価値化が必須になることから、リアル店舗の強みである「人のサービス力」を高めることが重要になります。そのためには、単に業務の指示命令を出すだけではなく、与えた仕事の出来栄えをしっかりとスタッフにフィードバックし、評価することが重要です。それを繰り返すことで、提供できるサービスの品質を上げていくことが必要です。この付加価値化とマルチタスク化によって従業員をしっかりと評価し、待遇を上げることによる「定着率」と「戦力値」アップを試みることが本質的な取り組みになると思っています。
またスタッフ向けのIT投資については、単なるオンライン研修やマニュアルを整えるだけと考えるべきではありません。一人ひとりがどこまでスキルアップしているのか?店舗全体として業務実行力やサービスレベルが高まっているのか?それによってスタッフの「働きがい」が創出できているか?店舗自体のコンディションは好調に推移しているか?など、ITによって可視化できることがたくさんあります。
これまで知り得なかった店舗の状態をITで見える化することから、本質的な課題を捉え、改善策を打っていくことが求められると考えています。