COLUMN
SWX総研
この3年で私たちの働き方は大きく変化しました。コロナウィルス感染症の拡大によって外出が制限され、働く場所がオフィスから自宅に変化し、人と接触することができない状態に追い込まれたからです。その戦いは、今なお続いています。ここからさらに、共存していくための環境変化に対応していく必要があります。
店舗サービス業の中でも、働き方が大きく変わると予想される職種があります。専門知識や技術、独自のセンスをもって商品を販売することができる「専門店販売員(専門スタッフ)」の方々です。
その理由は、以下のような環境の変化から起こると想定します。
外出規制やリモート勤務が主体となる中で、自宅でのPCやスマホの利用時間が伸びています。好きな洋服や生活雑貨、趣味の商品を買おうとしても、店舗に出向くのは気が引けます。またコモディティ化*した衣料品などはサイズが分かっていれば、EC経由で購入するのが日常的になってきました。
*どの会社の製品やサービスでも、顧客から見たときに「どれも似たようなもの」と見えるようになった状況、製品・サービスを意味するマーケティング用語。汎用品化とも呼ばれる。
そうなると、専門性が高くスタッフのアドバイスが必要な商品や、今シーズンの新作など、コーディネートを聞いたり、自分の持っている服と合わせられるかなどを聞きたい!とお客様に思ってもらえるような商品を店舗で販売していく必要があります。
このような店舗になるとスタッフは、専門知識や技術を使ってお客様の知りたいことに回答してくれる「アドバイザー」になっていきます。また、ファッションでも自分好みや身体の特徴を理解して、独自の切り口でコーディネートをしてくれるようなスタッフは、お客様にとって「専属コーディネーター」というポジションを獲得することになります。専門スタッフにお客様がつく、顧客化が始まります。
またコロナ禍ですでに取り組まれているお店もありますが、ECと店舗の融合した時代では、Zoomを使っての「リモート接客」や、販売員が積極的にWEBで商品を紹介するなどの「WEB接客」などオンラインでの接点を持つことができます。スタッフ個人のインスタやブランドHPにアップされる着こなしから接点が作られ「SNS接客」からも「来店」接客という導線を作ることができます。様々な接点から時間をかけて接客することで、来店時の接客満足度を高め、継続的にオンライン・オフラインでの接点を強化していくことになります。
このようなWEBとリアル店舗を行き来した専門スタッフの接客は、お客様にとって「サービス価値」となります。それは専門スタッフが生み出している「サービス力」が源泉です。最終的に接客に長けた専門スタッフは、数百人、数千人と多くのファン(お客様)を有し、その発信が影響力を持ち始めます。その結果「スタッフがスター化」していくのです。
「スタッフがスター化」することで、WEBと店舗での売上がより拡大し、コロナ禍での店舗経営の下支えとなっていくでしょう。しかし店舗経営者は「スタッフをスター化」させることで、顧客体験価値向上(CS)と従業員満足度向上(ES)の同時実現を目指す必要があります。さらに影響力の高いスタッフを引き留め続けるためにも、スタッフに「働きがい」を提供する仕組みを構築していくことが求められていくと思います。まさに、Shift Worker Experience(シフトワーカーの仕事体験価値向上)が必要な時代になっていくのです。