COLUMN
SWX総研
皆さんは人的資本経営をご存知でしょうか。
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる“経営のあり方”を言います。
第四次産業革命などによる産業構造の急激な変化*に対応しながら持続的に企業価値を高めていくためには、イノベーションや付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、経営戦略と適合的な人材戦略が重要になっています。
*店舗サービス業においては、WEBと融合した店舗体験の提供や購買手段の多様化への対応など
これまで経営指標(PLやBS)では、人材は「人件費」というコストとして捉えられてきました。しかしこのような背景により、人材を「コスト」ではなく投資するべき「資本」として考え、積極的に人材の価値を高めていこうという流れが起きているのです。
有限な資源しか持たない店舗が、多様な購買・決済方法など、価値観が多様化した消費者の要望全てに対応することはできません。
いかに店舗のデジタル化を進め、消費者にとって最適な店舗体験を提供していくかなど、店舗運営のイノベーションを起こす人材の育成が急務になっています。また今後、店舗の存在価値を捉え直した時に、店舗スタッフに求められる役割も変化していきます。より顧客の悩みや願望の解決に集中することで、店舗での付加価値創造も求められるようになるのです。
これからも、このような大きな変化が加速度的に起こります。「人的資本経営」に重心を置くことで、その時々に変化対応力のある店舗を作ることができるのです。それは、どんなに有効なAIやデジタル機材を導入しても、最終的に活用するのは「人」だからです。導入されたツールを武器にできるか、単なる機材にしてしまうかは、結局は「人」次第なのです。
つまり「人的資本経営」における重要な項目として、店舗スタッフの「エンゲージメント」は極めて重要な指標になります。
エンゲージメントが高いスタッフで構成される店舗は、「お客さまのために自ら考え、行動できる」人材が多くなります。逆に、エンゲージメントが低い店は「指示された以外、行動は起こさない」人材が多くなり、店舗の顧客体験は低くなります。結果、前者の売上・粗利は高くなりますが、後者は両指標ともに低くなるはずです。
では、エンゲージメントはどう高めれば良いのでしょうか。それは、従業員が「楽に、楽しく」働けているかが指標になります。
店舗に行かなくては全く情報が伝わってこないような環境では「楽に」働けている状態ではありません。店舗にある1台のPCでしか「マニュアル動画」が見れないような環境も「楽」ではないと思います。また、業務に対して適切なフィードバックや感謝がされないような職場では、やる気は高まりません。従業員の仕事に対してしっかりとしたフィードバックや感謝の気持ちを伝えることは、仕事を「ツライことから楽しいこと」に変えていきます。
このような人の「気持ち」に寄り添ったデジタル化が店舗スタッフのエンゲージメントを高め、楽しく働くスタッフを作り出していきます。そして、エンゲージメントの高いスタッフの接客が、顧客体験価値を高め、多くのリピート顧客を獲得することにつながるのです。このように、人的資本経営に重心をおいた経営へのシフトこそ、DX(デジタルトランスフォーメーション)に求められている本質だと思います。