COLUMN
SWX総研
SWX総研研究員の栗岡です。
9月19日から同月22日までの4連休(シルバーウィーク)は各地で多くの観光客が確認されました。私自身も連休を通じて北海道・東川町の旭岳へ行きました。三密を回避できるとあって、旭岳は多くの観光客でにぎわっていたほか、宿泊した宿では露天風呂に多くの入浴者がいたのが印象的でした。今後気温が下がりますが、2021年の春はアウトドア・レジャーが世界で爆発的に普及する年になるかもしれません。また、山、海、川でのアクティビティと音楽イベントを上手くマッチングさせたイベントも各地で開催されるでしょう。
今回のレポートでは、NTTドコモ社が提供するモバイル空間統計を参考にしながら、具体的にどの程度全国で人出が戻ってきたのかを見ながら、統計へのインプリケーションを説明させていただこうと思います。
同統計はドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。1時間ごとの人口を、24時間365日把握することができます。また本レポートで開示している数値は毎日15時時点の定点観測されたデータとなります。
以下は、データに対するインプリケーションです。
・多くの地域で緊急事態宣言前を大きく上回る人出を観測しました。しかし、すすきのをはじめとするナイト・アクティビティが多くある地域や、観光ではなくビジネス需要で県外からの渡航者を受け入れてきた地域では回復が鈍かったと言えるでしょう。また、時間帯別で人の動きをみていくと、19時以降から人出が段階的に減っていきます。日中に観光客を取り込めるカフェや雑貨店などの売上は好調に推移した可能性がありますが、一方でコロナ・ウィルス感染を危惧し、飲食店での宴会など夜の行動は旅先でも自粛する向きが強く、居酒屋業態などの売上の回復は限定的になっていると予想しています。
・連休の初日19日に感染拡大前を上回る数値を出した場所が茨木、千葉など関東エリアで見受けられました。これは、連休初日に県外からの観光客と、県内から県外へ移動する人々が同じ場所にいた可能性が高いとSWX総研では考えています。
・東京駅は、感染前、緊急事態宣言前、前年同月比すべての項目で50%前後の減少が確認されました。加えて、羽田空港のターミナル1,2ともに全日で感染拡大前を上回ることはできませんでした。銀座エリアでは人手が急回復しているものの、東京全体でみると人を惹きつける求心力が失われつつあることが鮮明になりました。
・存在感を示したのは京都エリアです。京都駅及び四条河原町エリアは、感染拡大前を回復。四条河原町エリアは、感染拡大前と比べ40~60%人通りが増加したと観測されました。ここ数年のインバウンド特需で京都旅行を手控えていた日本人の観光客が戻ってきたといえます。引き続き、京都市及び企業の取り組みに注視したいと考えています。
・ここ数年海外からの観光客を取り込み、大きく成長を遂げた大阪や福岡のエリアは、感染拡大前の水準を回復することができませんでした。外国人観光客の減少による景気の落ち込みを何で補うのか?この2都市だけでなく、日本国が直面する大きな課題です。
・コロナ禍で多くの国民は東京から地方都市へ観光及び働く場所を求めており、地方都市に於いては三密を防ぎながら観光アクティビティを創る必要に迫られています。シルバー・ウィークは、今後全国で起こるであろうワーケーション合戦の前哨戦のようなものではないかと考えています。自治体によってはリモートワーク用の設備や建物といった「箱もの」を付け焼刃で用意する動きも各地で見受けられます。しかし、ワーケーションを円滑に行うには、受け皿となる地域でオープンに人を受け入れることができるコミュニティの創生がより重要になるとSWX総研では考えています。
・穿った見方になるかもしれませんが、コロナ・ウィルスは、東京一極集中に歯止めをかけ、地方都市へ感染拡大前を上回る関係人口の創出のチャンスを与えてくれているという見方もできます。SWX総研では、「箱ものより人財」が重要であることを改めて強調します。同時に、我々自身が事業を通じサービス業界の人財育成のお手伝いをすることで、日本全国の町で元気に働く人々が一人でも増えるよう社員一同全力を尽くしてまいります。