COLUMN
SWX総研
最近、地方に外資系企業の進出が増加しています。今回はコストコが群馬に進出するという中で、「時給1,500円」が周辺の小売・外食店に打撃を与えているという記事から、サービス業がどのように人材不足を解消するべきかを考えてみます。
参照記事)全国各地でコストコ「高時給求人」の衝撃広がる 群馬の経営者は「時給1500円は無理」と嘆息
日本企業のシフトワーカーの時給は、その地域の「最低賃金」に近い金額設定が多いです。群馬の最低賃金は895円のため、コストコとの差は605円にもなります。
こちらの記事では以下のようなコメントが紹介されていました。
「コストコ、近くにあったら土日だけでも入りたいですね。時給が高くて透明性がある、それが一番じゃないですか。働きやすさとかはわかりませんが、どっちにしろ、日本は時給が安くて仕事環境も悪いバイトばかりですから」
ここで注目しないといけないのが、低賃金だけではなく”仕事の環境が悪い”という部分です。
コロナ前までは、人手が足りなければ「求人すればいい。変わりはいくらでもいる」という発想の経営陣が多かったように感じます。これはアルバイトだけではなく、社員にも言えることで、新卒採用から3年目までで社員の7割が辞めるという企業もあると聞くほどです。
これは、給与が上がる前に若手が会社を去っていくので、企業経営的には給与が安い人材で運営ができることを意味しています。3年で7割が辞めるような会社では、社員の給与が上がる前提でのビジネスモデルは構築しなくてもいいのです。
マネジメントを教わった店長もおらず、パワハラ・セクハラ問題が起きやすい「職場環境」や、福利厚生や給与が上がらない「制度待遇面」など、「離職率を改善する」という根本的な問題解決を怠っていたからこそ、「仕事環境が悪い」「待遇が悪い」という認識がついてしまい、コロナが明けて一気に人材ニーズが高まった今、これまでの”負債が大きくのしかかっている”状態の企業が顕在化してきました。
本来、会社経営は長期的な雇用を前提に、人材を育成し、生産性をあげ、給与や待遇を上げられるような事業モデルを構築していくことが求められます。
2030年のサービス業の人材の需給ギャップは60万人と推定されている中では、今よりももっと深刻な人手不足になっていくのは間違いありません。省人化や業務効率化への取り組みは待ったなしですが、人材を惹きつけるための仕事環境の改善も含めて対応をしなければ、単なる機械化された店舗になり、お客様にとって魅力的な店舗にはなりません。
(サービス・プロフィット・チェーン理論より、下図参照)
結局、お客様から選ばれなければ、事業はシュリンクしていくことになります。そのためには、商品力を高め、サービス力を高め続け、原価や人件費をカバーし、利益を出せる事業モデルの構築が必要となります。そして、それを考え続けるのが、本来の経営というものではないでしょうか。
この機会に、なぜ人材が集まらないのか?辞めてしまうのか?の根本的な問題から目を背けず、「人材から選ばれ続ける会社・店舗づくり」に注力することが大切です。この根本的な問題に対応できた企業が人手不足社会を生き残り、単なる省人化だけを考えた企業は衰退していくことになるでしょう。
今こそ、人材から選ばれる企業作りといったことに注力する時なのです。