COLUMN
SWX総研
付加価値をどう高めるのか?
我々のMission(パーパス)は”「はたらくを楽しく」”であり、それを軸に経営しています。
「はたらくを楽しく」するためには、従業員が働くことに意味を見出し、それがお客様にとっての“付加価値”につながることが重要です。従業員とお客様が生産する「サービス」を”付加価値”にすることで、労働生産性は高まると考えています。
そこで今回は、創業当時の2017年に発表され私が目にした論文をご紹介すると共に、2回に渡って付加価値創造について考えていきたいと思います。
出典:「日本の生産性の現状、サービス産業生産性向上に向けた取り組み」
東洋大学経済学部(当時) 滝澤教授
イノベーションを通じた生産性向上に関する研究会 財務省財務総合政策研究所
第1回「日米の労働生産性の比較」
下の図1は、日本と米国の労働生産性の変動分解を示しています。
生産性の考え方は、分子=アウトプット(産出されたもの=付加価値)、分母=インプット(労働投入量=労働時間と従業員数の積算)になります。1997年から2010年の変動分をとり、日米の成長率を比較すると、日本のサービス業(卸売・小売、宿泊・飲食)、運輸では縮小していることが分かります。
図1 労働生産性の変動分解の日米比較
卸売・小売業と宿泊・飲食業、運輸業をそれぞれ深く見てみると、米国は全業種で「付加価値(分子)」を高めることに主眼を置いて労働生産性を高めていることが分かります。一方、日本は「労働時間」や「従業員の人数」「労働者一人当たりの労働時間」を“減らす(分母を削減する)”ことで労働生産性を高めています。日本はその分「付加価値」が上がらず、逆に下がってしまっている状態であることが分かります。
つまり日本は分母にあたる「労働時間と従業員数」を減らすことで労働生産性を向上させているのです。いわゆる省人化や業務効率化を主軸としていることは明らかです。しかし分子の「付加価値」が減少しているため、価格を上げることはできません。よって販管費の人件費を削減することで利益を出すという「縮小傾向(シュリンク)」の考え方になっています。
図2卸売・小売の労働生産性変化要因の比較
図3 宿泊・飲食の労働生産性変化要因の比較
図4 運輸の労働生産性変化要因の比較
バブル崩壊から”失われた30年”と言われる間、デフレ経済が長く続き、売上や付加価値を上げることよりも、人件費を削減する方向で「低価格」を実現してきたことが、上記の図から分かります。
しかしこれからは、米国のように「付加価値」を高めることを主眼に置いた戦略に転換し「労働生産性」を向上させる必要があります。それは、物価上昇・エネルギー費用上昇・人件費上昇といったインフレ化する経済への転換期だからです。よって、その上昇分を価格転換することと同時に「付加価値」を創出するための投資が重要になると考えられます。
次回は企業が何に投資をすれば「付加価値」を高めることにつながるのかを考えていきたいと思います。