COLUMN
SWX総研
日本を訪れた外国人観光客者は約50万人に上り、旅行支援施策等によってホテルや旅館業、飲食店、小売店などは、漏れなく消費者需要の復活の手応えを感じられた10月だったと思います。
一方で円安はさらに進み、10/20には1ドル=150円まで到達しました。去年の11/17が114円ですから、この1年、かなりのスピードで円安が進んだことが分かります。これによって輸入に頼っているものの価格が高騰し、光熱費や原価・販管費に大きくのしかかってきています。
また、コロナで雇用調整をしていたために、急激な消費回復による人手不足も一気に顕在化することとなりました。
「円安による物価の上昇(原価↑)」によって「人手不足による賃金の上昇(販管費↑)」、店舗運営における「営業利益を減少」させる圧力がかかります。そのような状況では、店舗の営業利益を確保するために“「売上予算」や「来店予算」に応じた適正人員でのシフト作成”が必須になります。原価が上がり少なくなっている粗利に対して人件費がマネジメントできないと、途端に赤字になってしまう危険があるからです。
特に多店舗経営の場合は、全ての店舗において“適正人員でのシフト作成”が徹底されることによって、予算通り売上を立てられる店舗とそうではない店舗、人件費マネジメントができる店舗とそうではない店舗がはっきりと可視化されます。それはつまり、実力がついている店舗とそうではない店舗を明らかにできるということです。これは「予算通りの売上が立てられないのか?」、「設定した人件費に着地しないのか?」といった、本質的な問題を解決するためのヒントを与えてくれるはずです。
また、日本はこの30年でイギリス1国の労働力相当である3500万人の労働人口が減少することがわかっており、人手不足は構造的な問題です。少ない人員数で客を惹きつけられる店舗づくりが必須となります。魅力的な店舗を作るには、そこで働くスタッフのモチベーションアップが欠かせません。一般的に、人は仕事の幅が増え(担当できるポジションが増え)たり、質を高められる(出来栄えを評価される)と、仕事じたいを楽しく感じることができます。そして時間単位の売上が上がれば、労働生産性は高まります。
よってこれからは、人材教育に力を入れ「付加価値を高める経営」「仕事が楽しいと思えるエンゲージメント経営」へのシフトが必要になります。上位下達で作業指示を出したまま、仕事へのフィードバックもせずに「やって当たり前」的なスタンスではスタッフから見放され、経営が行き詰まっていくことは間違いありません。
このようにコロナによって様々な前提(円安での物価高騰、人手不足による人件費の高騰)が変化した世の中では、店舗運営の前提も変化させる必要があります。コロナ前よりも確実に、店舗運営に必要な「マネジメント能力」が要求されているのです。
①売上予測に応じた人件費マネジメント
②人材教育によって付加価値を高め、労働生産性を高める経営
③仕事が楽しいと思えるエンゲージメント経営
今年も残すところあと1ヶ月です。来年からの本格的な需要回復に備えて、ぜひ上記3つのポイントを意識した経営を実践してみてください。